- 努力の否定
- システムへの盲従
そりゃあジャンプ漫画ではないのだから,努力をテーマにする必要はない。現実には努力だけではどうにもならないこともある。だからといって,努力の結果を否定して奇跡の如き幸運で勝利を得るなどという恐ろしいメッセージを発して良いことにはならない。少なくとも,一般向けを装った作品では。
このメッセージは映画版以外の3バージョンではできるだけ薄くなる方向に変更されているように思える。前のエントリで工業化したとは言ったが,これらの3バージョンはまだまだ職人としての作家の感性が色濃く残されているからではないだろうか。
以下,4バージョン全てのネタバレを含めて語って行くので気になる方は自己防衛をよろしくお願いします。特にこのエントリは他に比べてネタバレ全開です。
映画版を見たときの一番の違和感はこれだったのだと思う。コミック版1巻で盛り上がっていた期待を裏切られ(過剰に期待しすぎた点もあるが),全力で否定したい気分になったのだ。そのときはたくさんある設定の不備・矛盾が原因なのかと思っていたが,微妙に違った。
文庫版・つばさ文庫版を買って読んで,それぞれの差について考えを整理していてようやく気づいた。この作品ではあまりにも多くの努力が報われない結果となっているのだ。その一部を箇条書きにしてみよう。バージョン間の差があるところはできるだけ版を示しておく。
- 夏希への告白のきっかけにしようとした(文庫版)数学オリンピックはあと少しのところでちょっとミス(動機の不純さから迷いが生じた:文庫版,暗号解読と同じく最後の一文字:つばさ文庫版)で日本代表を逃す
- 日本代表選手もウッカリでアメリカに敗退(コミック版)
- Solve meをがんばって解いたらウィルス感染&犯人扱い
- キング・カズマ vs ラブマシーン第一戦は子供達に邪魔されて敗北
- 侘助のアメリカでの研究成果は米軍に悪用される
- 一心不乱の心臓マッサージはもう遅い
- 24時間モニタしていざというときに駆けつけるつもりだったのに肝心なときは…
- 第2次上田合戦案による陣内家男性陣の連携プレーは熱暴走で失敗
- ばーちゃん涼しくしてやろうとうんせうんせと氷を運んだら従兄弟に殴られる
- グラフィック・モデリング・プログラミングに長ける(文庫版)のに他では城壁の罠が佐久間の手柄だということに触れてもらえない
- 「妹を,家族を守る」ことを自覚して突っ込んだけどタイミングが悪くて無謀な突撃になっちゃった
- OZは高度なセキュリティ(笑)で守られているのに侘助のiPhoneは4桁パスワード
- 一度負けてピンチになるまで誰もアカウント預けてくれなかった(まあ,ピンチに陥るのはお約束だけど)
- 徳衛(栄の夫)の浪費と侘助の持ち出しですっからかんになって,どうにかやってたけどなんか温泉湧いてきた
- 県大会の優勝旗を持ち帰ったらばあちゃんの葬式だった
しかし,ストーリーとしての中心となるアカウントを賭けた花札バトルが単に夏希の天運(映画版では前フリがないような…)とレアアイテム幸運値補正(文庫版)で決着というのはいただけない。それまでの家族が集まって協力してやってきたことは何だったというのだ。演出だというのは百も承知だが,気合いで山札が変わってたまるか。
数学得意+花札といったら夏希の手札+見えている札から確率計算をして,こいこいの判断材料として提示するところだろう。そして数字を承知の上で「ここで勝負をかけないと!」とかなんとか言って勝っちゃうのだ。その後の流れは同じで良いがもうちょっと連携を強調して欲しい。健二の暗号解読を邪魔するラブマシーン(偽ケンジ)を侘助のサポートで防御力0→カズマパンチ→解読成功→GPS誘導→他の家族で侘助ガード→侘助によるラブマシーン解体完了。これならみんなの努力あってこその勝利だ。映画版の演出は健二の暗号解読暗算を強調しすぎだ。

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